2011年11月25日金曜日

カンファランスの押さえどころ

そろそろ年度の3分の2が過ぎようとしています。
 WWとRWに共通する(しかも、最も重要な部分を占めている)カンファランスも、順調にこなせるようになっていますか?
 そこで、今回はその押さえどころというか、原則を振り返ってみたいと思います。

1.子どもが主役!
 子どもが語るいま書いていることや読んでいることに耳を傾けることが、まずはカンファランスの基本です。それには待つこと、問いかけること、そして何よりも信頼することが求められます。一番まずいのは、教師が話してしまうこと!

2.書き手/読み手としての子どもを把握する
 一人ひとりの子どもがもっている興味、関心、こだわり等をしっかり認識することが大切です。(教師自身の興味、関心、こだわり等も認識し、有効に活用することも忘れないでください。)

3.子どもたちは伝えたいことをもっている!
 子どもたちが書いている/描いていることや、読んで解釈したことには意味があると信じます。聞いてあげさえすれば。聞いたのですから、待つことはセットです。

4.低学年の子が話したことの大事な部分は書き出す
 自分で書くスピードがまだ遅い低学年の子には、カンファランス中に語ったことを教師が聞きながら(子どもの言葉で)書き出してあげると、記録として子どもも教師も使えます。

5.その時の子どもにとって最も相応しいことを教える
 間違えは目に付きやすく、すぐに修正したくなってしまうものですが、それをしたところで子どもが身につく形で学べるわけではありません。新しい作家の技や読み方に挑戦してできた時に、ほめた方が定着率ははるかにいいです。あるいは、ほめた上でその一歩先に挑戦するように促してみることの方が。

6.一人当たりの時間は短く
 教師はいつも、一時間の中でできるだけたくさんの子どもを対象にカンファランスをしたいと思っています。
 2を活かしつつも、子どもたちがいま書いている作品や読んでいる本も把握することで、一人当たりのカンファランスは短くても(二言三言=1~2分以下でも)効果的なやりとりができるようになります。
 逆に教師が必要と判断した時は、一応の制限時間である一人当たり5分を大幅に超えてもいいという柔軟性はもっていたいです。

7.次にすべきことを子どもが理解して終わる
 子どもとカンファランスすることで両者が学べるのですが、終わった後に子どもが何をしたらいいのかわかっていると、学びは広がり/継続します。これは、自立した書き手や読み手になっていくための練習でもあります。

 以上の1~7は、チェックリストとして使えますし、もしまだいくつかが押さえられていない場合は、それらをすべて一緒にやろうとするのではなく、一つずつ自分のものにして、着実に押さえられるようにしてください。子どもたちが新しい作家の技や読み方を一つずつ自分のものにしていくのと同じように。

参考: Writing Conference Principles, in Choice Literacy

2011年11月18日金曜日

朝読とRWの比較

今回は、とても基本的なことを・・・朝の読書の時間(以下、朝読)を実施している学校は少なくありません。

 あなたは、どれほどの価値を見出していますか?
 それとも、無駄な時間と思っていますか?
 そもそも何のためにしているのか、ご存知ですか?
 その目的のための方法として適切であるか考えたことはありますか?

 朝読の効果(いい点)と問題点(悪い点)を、ぜひ書き出してみてください。(書き出したものは、下のコメント欄に書き込むか、pro.workshop@gmail.comにぜひお送りください。)

 本来は、それをしっかり出して、問題点が効果を上回るのを確かめた上で実践すべきなのですが・・・、なんと言っても、学校で一番欠落しているものの一つが時間ですから。

 参考までに、朝読とRWを比較した表を見つけたので、以下に紹介します。(表をクリックすると、拡大します。)

2011年11月12日土曜日

執筆者への問いかけ

私たちは、教科書にしても、本にしても、雑誌にしても、与えられたテキストを鵜呑みにする傾向があります。
 「書いてあることに間違いがあるはずはない」「正しいことが書いてあるはずだ」という思い込みです。果たして本当にそうでしょうか?

 今回紹介する「執筆者への問いかけ」は、テキストには欠陥もあるという前提に立って、意味を作り出す/理解するための手段として活用します。
 その際、一人だけでするのではなく、クラスメイトと個々人が考えたことについて話し合いができれば、意味/理解はより一層深まり・広がります。

 執筆者(作家)に問いかける/フィードバックするためには、批判的に読むことが求められます。
 具体的には、
・ 内容と書き方を分析する
・ 気に入ったところとそうでないところをはっきりさせる
・ わからない(わかりにくい)ところは質問する
+ 改善のための提案をする
などを意識ながら読みます。

 これは、読むことと書くことを、切り離せない形で扱う方法でもあります。

 子どもたちにとっても、教師にとっても一番身近な本である教科書を例にとって進め方を紹介します。

1) 教科書の一部を分析的・批判的に読む
 理解は、「書き手と読み手の協同作業」であることを説明した上で、「理解できないのは、読み手だけの責任ではなく、書き手側に落ち度がある可能性もあること」を伝えたうえで、テキストを評価する/修正する人の目で読みます。
その際、プラス面とマイナス面の両方をしっかり把握しながら読むことが大切です。書き手のスタイル(書き方)が、理解を促進させたり、妨げたりしていることだってあるからです。
 以下のような質問を考えながら読むといいでしょう。
① 書き手が伝えようとしていることは何か?
② 書き手はなぜそれ(ら)を伝えようとしているのか?
③ 書き手はそれ(ら)をはっきりわかる形で書いてくれているか?
④ もっと理解しやすい方法で書くにはどんな方法が考えられるか?
⑤ あなたが書き手だったら、どんなふうに書いたか?

2) 実際に、①~⑤の質問に対する考えと、気に入った点や疑問点なども踏まえながら、「執筆者への問いかけ」=手紙を書きます。
 ここまでするだけでも、十分に価値がありますが、実際のアクションとして、その手紙を執筆者に送れたら、言うことありません。
 しかし、似たような手紙が20通~30通も届いたら、受け取る側も大変です。個別に回答してもらうことは期待できませんから。
そこで、(1)もっとも説得力のあるものをいくつか選ぶか、(2)何人かが集まってチームとしての問いかけ=手紙にする形★で、参考/修正に活用してもらうために教科書会社や執筆者に送ってみるのです。子どもたちをガッカリさせないために、送ることを事前に伝えて、受け取ってもらえることを確認してからのほうがいいと思います。

 教科書や作家の文章を批判的に読み、修正をすることは、自分の文章を批判的に読み、そして修正するのに役立ちます。
 読みにくい/わかりにくい教科書も、子どもたちの手で少しは読みやすい/わかりやすいものにすることができるかもしれません。

 教師の役割は、それを可能にするためにいい問いかけをしたり、子どもたちが質の高いやりとりをできるようにサポートすることです。もう一つは、子どもたちと「やらせる」「やらされる」の関係ではなく、モデルで示し、自分たちもやってみたい関係を築きたいものです。★★


参考資料: Questioning the Author, by Isabel L. Beck他著、International Reading Association発行、1997年


★ 小学校段階から、このような形で選択したり、協同で執筆する練習をしておけば、大人になってから大分楽です。9月30日に研究紀要や研究発表会の要綱について書いたところを参照


★★ 私事ですが、この「執筆者への問いかけ」という方法を頻繁に実行しています。主には、いい点を指摘するのと、疑問点を問いかける形で。(残念ながら、それに値する本に対してですから、95%は英語の本です。そのうちの何冊かは、翻訳するということまでやってしまいました。その際、執筆者への質問攻めは半端ではありません。質疑応答だけで新たな本が書けるぐらいになってしまったこともありました。)

2011年11月4日金曜日

たかが図表、されど図表

私たちが読んだり書いたりするもののほとんどは、ノンフィクションです。それも情報を提供したり、得たりすることが目的のものです。
 自分が実際に読んだり書いたりしたものすべての記録を1日取ってみると明らかになるはずです。(状況は、子どもたちも変わりないと思います。)

 小説は、最初から最後まで読まないと意味がないですが、情報を得るために読む方法は目的に応じて多様にあります。
 最近は、紙媒体のものと同じか、それ以上にインターネットでウェブ・ページを見る人が増えていますから、その方法は顕著に表れます。(なんと、「読む」とは言わずに「見る」と言うぐらいです。一昔前までは、新聞や雑誌でしたが、それらはまだ「読む」でした。)
そうした情報を得るときに多く出てくるのが、図表(やイラスト・写真・動画)です。それらを読みこなすことは、リサーチ・スキルとしてはもちろんのこと、ライフ・スキルとしても欠かせません。

 それほど日常的なものなのですが、読み・書き(RWとWWや他教科)を教える時に、図表等を扱ったことがある方は、どれぐらいいるでしょうか?
一般的には、言葉を補う媒体と見られがちですが、視角に訴えかける分、記憶に残るという点では文章よりもインパクトがあります。

 ジャンルによっては、どれだけいい文章を書けるかと同じウェートで、どれだけ効果的な図表等のビジュアルを使えるかで、読み手に伝わるメッセージ(そもそも読んでくれるか、も含めて)が決まります。もはや、わかりやすい文章だけでは不十分と言ってもいいぐらいです。(I See What You Mean, by Steve Moline 26ページ)
たとえば、「パンのつくり方」をインターネットで検索すると、多様なつくり方の方法を使って紹介していることがわかります。たとえば、文章で。写真を使って。ビデオで。フローチャートで、など。(パンづくりを解説した本も、文章以外の方法を効果的に使っているはずです。)

 これだけ文章以外の媒体に子どもたちが日常的に接していると扱わないわけにはいきません。たとえば、①本を読みながら/人の話を聞きながら、②メモをとり、③それを使って自分の文章を書くということは普通に行われてきましたが、最近は、②のメモを取る代わりに、マインドマップを描く方法も普及しています。視覚的に記録したり、考えたりした方がいい人がたくさんいることを示しています。

 図表等を使う際には、「伝えたい情報が読み手にしっかり伝わるためにはどんな方法を使うのがもっとも効果的か?」を問う必要があります。(I See What You Mean, by Steve Moline 23ページ)
 たとえば、私が2つの本を比較した時の例を紹介します。ジョン・バーニンガムの『おじいちゃん』とアリキの『おじいちゃんといっしょに』の内容の比較をするときに、可能性としては、文章で書く、表に表すなどもありましたが、私が結果的に選んだのは下の図でした。(『「読む力」はこうしてつける』90ページ)一番読み手にとって、わかりやすい/伝わりやすいと判断したからです。